なんとか一晩乗り越えた。しかし依然意識は戻らない。脈は180台、血圧は安定している。家族の見守りが多く、いつまでもICUにいるわけにはいかないので、個室に移される。皆で取り囲み声をかける。「奈那ちゃん、奈那ちゃん、頑張ってー」。手を握っていると、ピクッ、ピクッと力が入る。「回復してる?」…現状を信じたくない。夢であって欲しい。

 2日目の医師の説明。2回目のCT像は初日よりも脳浮腫が進み、悪化しているとのこと。これでもかと打ちのめされる。体は食べること、寝ることを要求しない。ただただ手を握り声をかけ続ける。そうしていないと不安で押しつぶされる。午後になって血圧が下がり始める。医師の言うとおりの進行。夕方には最高血圧が50台へ。依然脈は170〜180.マラソンを走り続けている状態だ。

 昼過ぎに、新聞を見た友達がお見舞いに来た。妻は「もう会えなくなるかもしれない」と思い会ってもらった。友人「みんなに伝えていいですか?」妻「いいよ。みんなに伝えてあげて」。この日の朝、宇佐高校では全校集会があり、奈那ちゃんの事故が伝えられた。

 夕方になって、続々とお見舞いの方が押しかけた。高校生、中学同級生、ガールスカウトの仲間、そして私達の関係者も。病院の駐車場では自転車が400台。廊下には人が溢れ列をなした。病院にとっては前代未聞のお見舞い劇だった。みんな奈那ちゃんの手を握って話しかけてくれた。「頑張れ、奈那ちゃん」。みんな離れたくない様子でどんどん時間が過ぎていく。奈那ちゃんにこんなに友達がいたなんて知らなかった。こんなに人気者だったとは…私はある意味唖然としていた。
 友達の列の中に1人、印象的な青年がいて、奈那ちゃんの手を取り泣いていた。どうも大切な友達らしい。妻が「奈那ちゃんのことスキだったの?」青年「いえ、あの、は〜」その後、面会時間もお構いなく、日付が変わるまでお見舞いの列は続いた。友達が来てくれているときは、奈那の最高血圧は50を保っていた。


 夜、妻は、寝なければならないと思うのだが、不安で寝れない状態。夜中の電話ボックスで泣き崩れる。私が支えてやらなければ…


病院2日目