お通夜

 夜が明けて次の日(10月19日)、午前中は葬儀社と打ち合わせ。何も分からなくても話は進んでいく。妻は「成人式もしてあげられなかったので、最高の式でお願いします。」と依頼。午後より親族が集まり始め午後4時に出棺。私は霊柩車の助手席に座りゆっくりと出発。ふと左に目をやると田んぼのあぜをキジが走っていた。めったに見かけることはないのだが、奈那ちゃんの旅立ちを見守ってくれたのか。

 斎場は溢れんばかりの花で埋もれていた。祭壇には奈那ちゃんの遺影が大きく輝いていた。ロビーや階段の踊り場には奈那ちゃんの写真、絵、賞状等ふんだんに飾られ、本人の軌跡が表現されていた。あらためて並べてみると、こんなに多才だったんだって気づかされた。気づくのが遅すぎるよ!

 午後7時からのお通夜だが1時間前くらいからお参りの方が見え始める。すると続々と絶え間なく想定を超えるお客さんが…会場に入りきれず、階段、ロビーに溢れる。結局700名を超えるお参り客があり、斎場としても異例の事態だったらしい。自分曰く、「私の葬式は寂しいもんだろうな!」私を超えることなんてできっこないと思ってた娘が、いつの間にか私を遥かに超えて人気者になっていたとは…
自分がどんなに小さな人間で、それに気づいていなかったか…

 お通夜のお経が終わった時、奈那ちゃんがスキだった曲として流したのは、ア・イ・シ・テ・ル・のサイン (Dreams Come True)。今も、この曲がかかるとこの時の光景が思い出される。

 みなさんを玄関で見送った後、親族の皆さんからずいぶん遅れて夜とぎに合流。坂を転がるようにトーンダウン。ひとまず何か食べなければ…いままで栄養ドリンクでつないできた体。そして妻もようやく眠りについた。